EcoSmart Fire Magazine

火と人

Vol.11

炎との「間」をデザインする。新しいEcoSmart Fire 東京ショールーム。

火と人 Vol.11

東京・南青山に、EcoSmart Fireの新たな拠点「EcoSmart Fire 東京ショールーム」がオープンした。これまでの六本木と南青山、二つのショールームを統合し、住空間からアウトドア、ホテルなど、炎のあるさまざまなシーンを一つの場所で体感できる空間だ。

一歩足を踏み入れると、大きな開口部から光が差し込み、窓の外の緑が室内へと連続する。視線を移すと、ダイニングやリビング、テラスを思わせるそれぞれの場にEcoSmart Fireの炎が静かに揺れている。商品として一台ずつ眺めるだけではなく、そのそばで人が集い、語らい、くつろぐ時間までが想像できる。従来のショールームという枠を超え、ひとつの豊かな住空間を訪れたような感覚になる。

Photo TAKUYA NAGATA

空間設計を手がけたのは、商業施設やオフィス、店舗など、領域を横断して多様なプロジェクトに取り組む設計デザインスタジオ〈CLOCK〉。代表の萱野喬さん、プロデューサーの寺本亮介さん、デザイナーの眞壁郡さんの3名に、空間に込めた思想と、今回の仕事を通してあらためて見えてきた炎の可能性を聞いた。

左:寺本 亮介さん(取締役COO / プロデューサー)中央:萱野 喬さん(代表取締役CEO / 建築プロデュサー)右:眞壁 郡さん(デザイナー)

 

炎との距離、炎と過ごす時間

設計にあたり、CLOCKが掲げたコンセプトは「炎と間(ま)」。そこには、空間的な距離と時間という二つの意味が込められている。

「炎は、遠くから見れば光となり、近づきすぎれば危険なものにもなります。適切な距離を取ることで、身体を温めたり、揺らぎを眺め、その美しさを感じたりできる。炎と人のあいだにある心地よい距離を、まず大切にしました」

もう一つの「間」は、炎のそばで過ごす時間を指す。

「ここは商品を集約して見せるショールームですが、単に製品を見るだけの場所にはしたくありませんでした。炎の周りで人がどのように過ごし、どのような時間が生まれるのか。商品を使う先にある風景まで感じられる場所にしたいと考えました」

炎を主役にするため、内装で重視したのは「余白」だった。EcoSmart Fireのプロダクトにはそれぞれ異なる個性がある。それらを過剰な演出で飾るのではなく、必要な距離を取りながら配置することで、炎の表情とプロダクトの造形が自然に浮かび上がるように意識した。

「炎をより際立たせるためには、何かを足すよりも、余白をつくることが大切でした。炎と向き合い、より親密な関係になれるような空間を考えました」

一つの空間に、いくつもの暮らしのシーンを

エントランスの正面では、まず炎そのものが来場者を迎える。窓際にはプロダクトを一台ずつ、その佇まいまで確認できる展示エリアを設けた。大きな意匠を加えず、白い壁と余白を背景にすることで、製品と炎の揺らぎが自然と引き立つ。

Photo TAKUYA NAGATA

その先に広がるのは、アウトドア、ダイニング、リビングを思わせる三つの場面だ。窓の外の緑とつながるように設えたアウトドアエリアでは、テラスで炎を囲む時間が想起される。植物には、ブランド誕生の地であるオーストラリアにちなんだ樹種を選び、室内と外の風景がシームレスに連なるよう計画した。

Photo TAKUYA NAGATA

中央のダイニングエリアは、このショールームにおけるコミュニケーションの中心だ。シンクや大きなテーブルを備え、商品について説明するだけでなく、自然に人が集まり、会話が生まれる場所として構成されている。

「ダイニングは、空間のなかで最も人が集まり、コミュニケーションが生まれる場所です。少しカジュアルで、話しやすい空気をつくりたいと考えました」

Photo TAKUYA NAGATA

壁面を大きく覆うクラフト感のあるタイルは、空間に温かな表情をもたらしている。窯の中で炎によって焼かれた素材と、目の前で揺れる炎。その二つの取り合わせが、白を基調とした空間に豊かな質感を加えている。

奥にあるエリアには、ホテルの客室や夜のリビングを思わせる落ち着いた空間がある。カーテンを閉じれば、日中でも周囲の明るさが抑えられ、夜の闇に浮かぶ炎を体験できる。本来、炎がより鮮やかに見える夜の情景を伝えるための仕掛けでもある。

プロダクトのカテゴリーによって機械的に分けるのではなく、炎のある暮らしの場面によって空間を構成する。それによって、来場者は自宅や別荘、ホテル、店舗など、それぞれの環境に炎を置いた姿を具体的に思い描くことができる。

ブランドの原点を映す、乾いた空気と素材

内装のもう一つの手がかりとなったのが、EcoSmart Fireが生まれたオーストラリアの空気感だった。

「オーストラリアの住空間にある、からりと乾いた空気や、屋内と屋外が連続する感覚を意識しました。いろいろなものをつくり込みすぎないシンプルさも、今回のコンセプトである余白につながっています」

Photo TAKUYA NAGATA

白を基調とした壁、素朴な表情を残したタイル、石、植物。それぞれの素材は強く主張するのではなく、炎の色や揺らぎを受け止める背景として選ばれた。窓際にアウトドアの製品を寄せ、外の緑と視覚的につなげたことも、室内とテラスの境界が緩やかなオーストラリアの暮らしを思わせる。

Photo TAKUYA NAGATA

CLOCKは広い範囲を白い余白として整え、タイルや石など、空間の核となる箇所に力を注いだ。すべてを等しく装飾するのではなく、見せる場所と引く場所を明確にする。その判断が、結果として「炎と間」という思想をいっそう鮮明にしているように感じられた。

Photo TAKUYA NAGATA

「早い段階で、余白を広く取りながらコストのバランスを整える方向性を共有できたことも大きかったですね。EcoSmart Fireの皆さんが思い描いていた方向と、私たちが大切にする考えが、最初からまっすぐ重なっていました」

炎が、空間設計の自然な選択肢に

今回のプロジェクトを手がける以前、CLOCKにとって、炎を中心に据えて空間全体を設計する機会は多くなかったという。しかし、実際に炎と向き合うなかで、視覚的な美しさだけではない力をあらためて感じたそうだ。

「炎は目で見るだけのものではなく、熱や匂いを含め、身体で、本能的に感じるものです。現代の暮らしでは、あえて取り入れるものになっていますが、もともとは人の営みの根源にあった存在です」

CLOCKのメンバーは以前、キャンプで焚き火を囲みながら、自分たちのこれからについて語り合ったことがあるという。普段から多くの言葉を交わしていても、火を囲むと、その場にはいつもとは違う時間が流れる。炎を眺めているうちに、メンバーが自然と集まり、会話が生まれていった。

「炎の前では普段よりも深いコミュニケーションが生まれる一方で、瞑想に近い状態にもなれます。現代のストレスから少し距離を置けるような時間です。そこに火がなければ、きっと少し物足りなかったと思います」

そんな彼らが今後、炎を取り入れてみたいと話すのが、オフィスだ。

多くの人が、一日の長い時間をモニターに向かって過ごす場所。仕事のための機能だけでなく、そこに本物の炎があったなら。視線を休ませ、人が集まり、思考を緩める時間をつくることができるかもしれない。

「これまではコストや導入への敷居の高さから、炎は内装設計の選択肢に入りにくかったのかもしれません。でも、今回の仕事を通して、もっとさまざまな場所に取り入れられると感じました。マテリアルや空間に合わせてEcoSmart Fireを組み込めば、ホテルや飲食店だけではなく、オフィスにも展開できます。炎が、空間を考えるときの自然な選択肢になっていくと良いなと思います」

薪暖炉のような煙突や、ガス暖炉に必要な配管を設けることなく、周囲の素材や造作と組み合わせながら、空間に合わせて設計できるEcoSmart Fire。新ショールームでは、その自由度を体現するように、石材にバーナーを組み込んだ暖炉や、ダイニングテーブルと同じ高さで炎を囲む提案も見ることができる。

炎は照明でも、家具でもない。しかし、ひとたび火が灯ると、空間に重心が生まれ、人の居場所と時間の流れが変わる。その存在をどう置き、どれほどの距離を取るのか。

新しい東京ショールームは、炎と人のあいだに生まれる豊かな「間」を体験し、自分自身の暮らしへと想像を広げる、そんな場所だ。


EcoSmart Fire 東京ショールーム

住所:〒107-0062 東京都港区南青山2-31-6 1F
営業時間:11:00~19:00
定休日:無(臨時休業を除く)

http://ecosmartfire.mmlproducts.com

写真協力
TAKUYA NAGATA
IG: @takuyanagata2
URL:  https://takuya-nagata.com/

インタビュアー

小西亜希子

撮影

森山広三

CLOCK

「調和」を軸に、街の記憶や建物の素地、素材の質感に耳を澄ませながら空間を形づくるデザイン設計事務所。関わる人々に寄り添い、その思いを受け止めながら、心地よい居場所や時間を共に描き出す。空間のあり方を戦略やブランドの個性と結び付け、体験としての価値へとつなげていく。

IG: @clocktyo
URL: https://clocktyo.com/

CLOCK

「調和」を軸に、街の記憶や建物の素地、素材の質感に耳を澄ませながら空間を形づくるデザイン設計事務所。関わる人々に寄り添い、その思いを受け止めながら、心地よい居場所や時間を共に描き出す。空間のあり方を戦略やブランドの個性と結び付け、体験としての価値へとつなげていく。

IG: @clocktyo
URL: https://clocktyo.com/